富士通のシステム障害で東証の取引が終日停止
2020年10月1日、東京証券取引所(東証)でシステム障害が発生し、復旧に時間を要することから終日の取引を停止し、翌日10月2日から通常どおり再開できた。
障害を起こしたのは、富士通の基幹システム「アローヘッド」。富士通製のストレージETERNUS(エターナス)のメモリーに故障が発生し、自動切り替えが動作しなかったことが原因のようだ。
丸一日の取引を停止したことで、約3兆円の取引機会を失い、東証、さらには日本の証券取引に対しての国内外の投資家からの信頼を失墜させることとなってしまった。
これについて、「極めて重大な事案」と見て、金融庁、そしてNISC(内閣サイバーセキュリティセンター)それぞれが調査を予定している。
なぜシステム開発を一社に継続させるのか
これについて、東証が富士通に対して損害賠償などの請求をすることは考えていないとのことだが、2005年11月にシステム改修の設定ミスによる障害で数時間の全銘柄の取引停止、2012年2月にサーバー故障の自動切り替えがうまくいかずさらにSEの人為的ミスが重なった障害で一部の銘柄の取引停止、と、過去に2回もインシデントを起こしており、今回で3度目となる。
それでも東証はなぜ富士通にシステム開発を継続させるのだろうか。それには東証の事情として、証券取引の複雑業務をシステム化できるノウハウ・スキルを持っているシステム開発会社(SI)が限られており、またシステム改修によって現行の担当SIしか実質できなくなってしまっている、という理由のようだ。
日経新聞は証券取引の情報をネタにしているメディアということで、本件に対してかなりシビアな書き方をしている。
日経新聞:[社説]東証全面停止は市場の信頼損ねる失態だ
日経新聞:富士通、3度目の失態 東証システム障害〜教訓生きず、DX軸の成長戦略に暗雲〜
システム開発は仕様の縛りで勝者が決まる
私も省庁向けのシステム開発を担当していた会社にいたので、SIerの事情は把握しているが、SIではシステムを囲い込むために、ありとあらゆる策を練る。随意契約にならない場合でも、仕様書の文言で実質現行の業者しかできないような内容に縛ってしまうことも多々ある。システム受注元の担当者は数年で人事異動で変わってしまうことも多く、自分たちで仕様書を作るのが難しい。そこでSIerが仕様書作成を手伝うと言って、案を書いたりすることもあるが、親切にしているように思えて実は一社縛りの文言を入れ込んでいる。
今回のコロナ禍で日本がIT後進国ということが浮き彫りになってしまったが、こうした要因の一つにガラパゴス化している日本のSI事情があるだろう。既存の会社しか参入できないように作るので、新規の参入や技術革新が難しい。ITシステムに多額の投資を行いながら、効果が上げられていないという事情を私はとても憂慮している。
ガラパゴスのSI慣習はやめよう
つくづくそう思う。
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